THESE ARE THE DAYS OF OUR LIVES

VOL.6 WHO ARE YOU?
 6月、私は海外にいた。少し嬉しかった。
海外にいられることではなく、サッカーのW杯に関わらなくてすむからである。
日本では大変盛り上がっているということは知っていた。
それどころか、日本の躍進は遥か海の向こうにも伝わっていた。
モントリオールでレンタカーを返す時、レンタカー屋さんが
「日本のサッカーはすごいよ。特にNo.5の選手はとっても素晴らしい。
えっとー、名前はなっていったか忘れたけど……」
私は、日本の5番が誰だか知らなかった。
けれども、稲本が大活躍していたというのは、ちらっと聞いていたので
「たぶん、イナモトだろ」というと、レンタカー屋さんは
「おお!そうだ! イナモト!イナモト!」と大変興奮していた。

私はサッカーファンではないが、節操のない性格のため、
話題作りで(笑)日本の試合がある日に限り日本のユニホームを着てみた。
フランスではちょっと怖かったが、パリのカフェで生ビールを飲んでいると
スーツを着たビジネスマンが話しかけてきた。
「フランス語はわからない」告げると、両手の指で何かを伝えようとしていた。
それは、その日行われたトルコ戦のスコアー“0−1”であった。
日本が負けたのでフランス人も穏やかだったのだ。
ル・マンでは、ドライバーのミハエル・クルム(ドイツ人)が私の服に反応し
「おお!ニッポン、ニッポン!」と喜んでくれた。
ま、奥さんが日本人(元プロテニスプレーヤーの伊達公子さん)だからというのもあるが。

そうではあるが、日本にいる人に比べれば、その熱というのは100分の1以下であろう。
日本の試合の結果を知っている程度なのだ。
帰国の日、私はドイツのフランクフルトにいた。
夜の便だったので、昼間は食事をしに街に出た。
タクシーの運転手が、「韓国人か?」と聞くので「日本人だ」と答えると、
「今、ドイツと韓国の試合をやってるんだ」と言ってラジオのスイッチを入れた。
それも、大音量で。
しかも、私にはラジオが何を言っているにかわからない。ただの雑音だ。
しかし、そこでわかったことは、今ドイツの試合をやっているということだった。

所々、人だかりがあった。
テレビでドイツの試合を放映していた。
KOREAN AIRのオフィスがあった。
中には誰も従業員がいなかった。
理由はわかる。
彼らは試合終了と同時に仕事を再開させるはずだ。

繁華街を2時間くらいブラブラしたあげく、回転寿司を発見、そこに入った。
なんと、この回転寿司屋で今回ドイツで一番うまいビールを飲むことになる。
店の中には、店長らしき日本人男性の従業員がいて、
実に長い時間かけてビールを注いでいるのだ。
そして、そのビールは想像を絶するうまさだった。
私は、急いでそのビールを飲み干した。
ちょっと、がっついてるみたいな感じだった。
もう一杯たのむと、注文を受けたのはちょっと愛想のない女性だった。
ビールはあっという間に出てきた。
「むむ、なぜこんな早い???」

見た目でわかるのは、泡。
泡が荒く、すぐ切れていく。
飲んでみると、苦い。舌が痛い苦さだ。
ただ、始めにこれを飲んでいたら、何も不満はないだろう。
でも5分前、私は同じサーバーから注がれた、まるで別物のビールの飲んでしまったのだ。
これは“交通事故”。
私の頭の中は、早くこのビールを飲み干し、
もう一度店長(?)にビールを注いでもらうことだけを考えていた。
しかし、いない。5分待っても、10分待っても戻らない。
ランチタイムも終わり、もう帰ってしまったんだろうか。
目の前のジョッキはもう空だ。
「でも、女性従業員の注ぐビールならもういらない」なんて考えていたら、
外が急に騒がしくなってきた。
クラクションが鳴り響いていた。

ドイツが勝ったようだ。
人々は車の中から雄叫びを上げながら街の中心に向かっている。
「もしかしたら、面白いものが見られるのでは」。
この状況をカメラに収め日本に電送しよう。
パソコンは追加の注文があった時に備えて持ち歩いていたが、
カメラは全てホテルにあずけていた。
ただ見ていても面白くない。
私が考えたことは、「デジカメを買おう」ということだった。
幸い、昨日お土産を買うため街を歩いたので、売っている場所は知っていた。
目星はついていた。

149ユーロのデジカメと30ユーロのコンパクトフラッシュを買った。
街中で開封し、電池を入れてみると作動した。助かった。

(つづく)